通常、賃貸物件でのフローリングの全面張替えは許可されませんが、ごく稀に、大家さんとの良好な関係や、特別な事情によって、「自分でやるならいいですよ」という許可が下りることがあるかもしれません。もし、あなたがその幸運なケースに恵まれ、DIYでの全面張替えに挑戦しようと考えているなら、その前に知っておかなければならない大きなリスクと、相当な覚悟についてお話しなければなりません。まず、理解しておくべきは、フローリングの全面張替えは、DIYの中でも「最高難易度」に分類される作業であるということです。クッションフロアを敷くのとは訳が違います。その難しさの核心は、「下地処理」にあります。既存のフローリングを剥がした後に現れる下地は、必ずしも平らで頑丈な状態とは限りません。長年の湿気で腐食していたり、歪んでいたりすることも多いのです。この下地を適切に補修し、完全に水平な状態を作り出せなければ、その上にいくらきれいなフローリングを張っても、数年後には必ずきしみや沈み、床鳴りといった不具合が発生します。この下地処理には、専門的な知識と技術、そして専用の工具が必要です。素人が見よう見まねで行うと、かえって建物の構造を傷つけてしまう危険性すらあります。また、仕上がりの美しさも、プロとは歴然とした差が出ます。壁際のカットの精度や、板と板の間の隙間の処理など、細部に「素人っぽさ」が滲み出てしまい、せっかく張り替えたのに満足感が得られない、という結果にもなりかねません。そして、最大のリスクは、「失敗した場合の責任は全て自分にある」ということです。もし、施工に失敗して床の状態を悪化させてしまえば、その修繕費用は当然、自分で負担しなければなりません。安く済ませるつもりが、結局、業者に頼むよりもはるかに高くついてしまった、というケースも十分に考えられます。大家さんの許可が出たとしても、それはあなたのDIYの腕を信頼してのことではありません。フローリングの全面張替えは、よほどの経験と自信がない限り、その道のプロに任せるのが、最も賢明で、最終的には安上がりな選択であるということを、心に留めておいてください。
賃貸フローリングを自分で全面張替えするリスクと覚悟