和モダンな空間の魅力を最大限に引き出すためには、家具や内装材の選定と同じくらい、あるいはそれ以上に「照明計画」が重要な役割を果たします。日本の伝統的な建築が持つ美意識の根底には、作家の谷崎潤一郎が「陰翳礼讃」で述べたように、明るさそのものではなく、光と影が織りなす繊細な濃淡を慈しむ文化があります。この考え方を現代の住まいに取り入れることが、上質な和モダン空間を創り出す鍵となるのです。まず、和モダンな照明計画で避けたいのが、部屋全体を均一に煌々と照らし出すシーリングライト一つの「一室一灯」の考え方です。これでは陰影が生まれず、空間がのっぺりと平面的に見えてしまいます。代わりに基本としたいのが、必要な場所に、必要なあかりを配置する「多灯分散」の手法です。天井には複数のダウンライトを効果的に配置し、食事をするダイニングテーブルの上や、本を読むソファの周りなど、生活シーンに合わせて照らす範囲を考えます。これにより、空間の中に明るい場所と、ほのかな暗がりのコントラストが生まれ、部屋に奥行きと落ち着きが生まれます。次に重要なのが、間接照明の活用です。壁や天井、床といった建築の要素に光を当て、その反射光で空間を照らす間接照明は、和モダンな空間と非常に相性が良い手法です。例えば、天井の縁を折り上げて光源を隠し、天井面を柔らかく照らすコーブ照明や、壁面を照らして空間の広がりを演出するコーニス照明などがあります。テレビボードの下や、小上がりの段差の下にライン状の照明を仕込むのも効果的です。直接的な光が目に入らないため、眩しさを感じさせず、リラックスした雰囲気を作り出すことができます。照明器具そのもののデザインも、空間のテイストを決定づける重要な要素です。和紙や白木、竹といった自然素材を使ったペンダントライトやフロアスタンドは、和モダンの空間に温かみと柔らかな表情を加えてくれます。特に、和紙を通した光は、月明かりのように優しく拡散し、見る人の心を和ませてくれるでしょう。器具を選ぶ際には、デザインだけでなく、光の色温度にも注目しましょう。