都市部の限られた住空間において、一つの広いフローリングの部屋を多目的に使いこなす知恵として、畳マットを用いたゾーニング手法が注目を集めています。今回取り上げる事例は、三十代の共働き夫婦が暮らす一LDKのマンションです。LDK全体が約十五畳のフローリングとなっており、食事、寛ぎ、そしてテレワークの場所を一つの空間に収める必要がありました。彼らが採用したのは、リビングの中央に六枚の正方形畳マットを配置し、そこを寛ぎのメインスペースとする方法です。これにより、ソファを置かずに床に近い生活、いわゆる床座スタイルを実現しました。この事例の特筆すべき点は、畳マットを敷くことで視覚的な境界線が生まれ、壁を作ることなく食事スペースと寛ぎスペースが明確に分かれたことです。食事はダイニングテーブルで行い、食後は畳の上に移動してリフレッシュするという生活のリズムが、フローリングの色のコントラストによって心理的にも強調されるようになりました。また、畳マットの下に市販の収納ボックスを組み込んだ高床式の小上がりユニットを採用したことで、フローリングの弱点である収納不足も同時に解消されています。この小上がりの段差は、腰掛けるのにもちょうど良い高さであり、テレワーク中の休憩時間には、椅子から離れて畳の上で大の字になって休むことができるという、心身のオンとオフの切り替えに大きく寄与しています。さらに、来客時にはこの畳スペースが臨時の寝室としても機能し、フローリングに直接布団を敷くよりも衛生的で寝心地が良いと好評です。この事例から学べるのは、畳マットは単なる床の保護材やラグの代わりではなく、空間の構造そのものを再定義するツールとして機能するということです。フローリングのフラットな広がりの中に、畳という異なる質感と高さを導入することで、現代の多様なライフスタイルに即した、多機能で豊かな住空間を創出することが可能になります。
フローリング空間を畳マットで仕切る新しい住まいの事例研究