ある都内のマンションに住むご家族の事例ですが、夏場になるとどこからともなく蚊が侵入し、夜中に子供が刺されて眠れないという悩みを抱えておられました。当初は玄関の開け閉めが原因だと思い、玄関ドアに吊るすタイプの虫除けを設置したり、ベランダに香取線香を置いたりと対策を講じていましたが、一向に改善の兆しが見えませんでした。そこで詳しく調査を行ったところ、意外な事実が判明しました。原因は、ベランダに出る掃き出し窓の網戸の向きだったのです。そのご家庭では、家具の配置の都合上、ベランダへの出入りを左側の窓から行うのが習慣となっており、網戸も常に左側にセットされていました。さらに、冷房効率を考えて窓を十五センチほどだけ開けて換気することが多かったため、構造上、網戸とガラスの間に数センチの隙間が常時発生していたのです。現場でライトを当てて確認すると、まさにその隙間が外の空気とダイレクトに繋がっていることが一目瞭然でした。対策として、家具の配置を少しだけずらし、右側の窓から出入りするように変更した上で、網戸を右側に固定するように指導しました。すると、その翌日からパタリと蚊の侵入が止まったのです。この事例が示しているのは、どれほど強力な殺虫剤や防虫グッズを導入しても、物理的な隙間が開いたままでは効果が半減してしまうということです。特に小さなお子様がいる家庭では、薬品の使用を控えたいと考える方も多いでしょう。そうした際、網戸を正しい向きで使用するという物理的な防御は、最も安全で確実な手段となります。多くの人は、窓というものは左右どちらを開けても同じだと思い込んでいますが、実際には設計者の意図した「正しい閉まり方」が存在します。このご家族も、網戸の向きを変えるだけでこれほど劇的に生活が変わるとは思わなかったと大変驚いておられました。住まいの不満を解消する鍵は、案外こうしたシンプルな物理法則の中にあるのかもしれません。