築三十年を迎えた木造住宅の一階の角部屋。そこは、かつては祖父母の居室として使われていた八畳の純和室でした。しかし、祖父母が亡くなってからは使われることもなくなり、障子は破れ、畳は色褪せ、部屋全体が時間の止まったような静けさに包まれていました。この部屋を、家族が集まれる明るい多目的スペースとして再生させよう、という計画が持ち上がったのは、娘がピアノを習い始めたことがきっかけでした。このリフォームプロジェクトで最も重視されたのは、ただ床をフローリングに変えるだけでなく、部屋の持つポテンシャルを最大限に引き出すことでした。まず、長年の湿気で傷んでいた畳と、その下の床板をすべて撤去。床下には防湿シートと断熱材を新たに敷き詰め、家の快適性能を根本から見直しました。床材には、傷に強く、ピアノのような重量物にも耐えられる、硬質なオーク材の複合フローリングが選ばれました。色は、部屋全体を明るく見せるナチュラルなライトオークです。次に、部屋の印象を大きく左右する壁です。古びた砂壁はすべて剥がし、下地を整えた上で、吸放湿性に優れた珪藻土の塗り壁で仕上げました。色は温かみのあるアイボリーホワイトを選択。これにより、光が壁面で柔らかく反射し、部屋全体が優しい明るさに満たされるようになりました。このリフォームのハイライトは、空間の広がりを演出するための大胆な間取りの変更でした。部屋の隅にあった大きな押入れは、その仕切り壁を完全に撤去。生まれたスペースは、壁一面のオープンな造り付け収納棚へと姿を変えました。これにより、本やアルバム、子供のおもちゃなどをすっきりと収納できるだけでなく、部屋に奥行きが生まれ、実際の畳数以上の広がりを感じられるようになったのです。また、リビングへと繋がる襖は取り払い、開口部を広げて三枚連動の大きな上吊り式引き戸を設置しました。普段は開け放しておくことでリビングと一体の開放的な空間として使い、来客時やピアノの練習時には閉め切って個室として利用できる、フレキシブルな設計です。完成した部屋は、以前の薄暗い和室の面影を全く感じさせない、光と風が通り抜ける心地よい空間へと生まれ変わりました。中央にはピアノが置かれ、壁の棚には家族の写真や思い出の品が飾られています。子供がピアノを弾き、その隣で親が読書をする。